検索
商品情報
レシピ
知る・楽しむ
企業情報
ニュース
お問い合わせ
もしもの時に役立つ防災コラム 番外編

「防災に関する質問にお答えします」第2回

「もしもの時に役立つ防災コラム」をお読みいただきありがとうございます。
本コラムへの感想アンケートでいただいた質問への回答、第2回です。
今回も国際災害レスキューナースの辻直美さんにお答えいただきます。

第1回はこちら!「防災に関する質問にお答えします」第1回

<アンケート概要>
実施時期:2023年11月10日~2023年11月27日
回答数:1,836件

Q 質問:もしもの時を実体験する方法

「もしもの時」を家で実体験するには、どういう準備が必要か、どういう風に行うと失敗しないかを知りたいです。

A:回答
私は1番簡単にできる防災訓練とは、家の中で真っ暗になれる場所で10分過ごすことだと思います。マンションの場合、窓がないトイレが多いので、電気をつけなければブラックアウトを体験できますよ。真っ暗闇に現代人は慣れていないので、そこで過ごすことによる心理的な変化を体験しておくことは重要です。
次に、真っ暗闇の中で、懐中電灯やヘッドライトなど明かりをつける練習です。普段見慣れていても真っ暗な中でスイッチをつける事はかなり困難です。そしてどれぐらい明るくなるかも知っておきましょう。

次に災害用トイレを実際に使ってみる。色々なパターンの災害用トイレがあるので、実際自分にはどれが1番リラックスして安心して使用できるのかを知っておきましょう。できれば大も小もやってみて、臭い対策などもしておくことが良いと思います。

そして1日だけ1人3リットルの水で過ごしてみる。途中でリタイヤしても構いません。しかしリタイヤしてしまった理由を明確にすることが大事です。自分は何に1番水を使ってしまうのかを把握することで、1日3リットルでそもそも生きていけるのかどうかという計算が出来ます。

その次に、1日だけガスを使わない、電気を使わないという体験をする。電気・ガス同時に使わないのは相当ハードルが上がるので、1つずつやってみることをおすすめします。

最後に、ライフラインを断絶して食事を作ってみる。まずは一食だけやってみる。その時には、ペットボトルの水とカセットコンロ、調理器具、そして食材は家にあるものだけで料理をしてみましょう。

だんだんと慣れてきたらライフラインを切った生活を1泊2日で、自宅でやってみる、さらに慣れてきたら3日やってみる、というように少しずつハードルを上げていくことで、リアルな避難生活を体験できます。

ちなみに、私は年に4回春夏秋冬に合わせて1週間ライフラインを切った生活をします。回を重ねるごとに必要ではなかったもの、必要になったものが明確になります。そしてスキルが上がるので、物とモノを組み合わせて必要なものを手に入れることができるようになってきました。春夏秋冬で必要なものや、予想されるトラブルも違うので4回しています。そしてこの訓練は実はとても楽しくて、新しいアイディアが次々と湧いて私にとっては楽しみな時間になっています。(普通に仕事にも行くので、まさか訓練中だとはバレないことが多く、それも私にとっては驚きであり、楽しみです)

Q 質問:避難期間別の冷凍食品活用法

冷凍食品の活用で、短期的な場合から、長期的な(数週間を超えるような)避難生活にスイッチする備えとしての知識や情報を教えてください。

A:回答
災害が起きた際にニュースなどで被害状況を確認し、救援物資が手に入りそうかどうかを判断してから、備蓄をどう使っていくかを考えましょう。

以下の順番で食べるようにしてください。
① 冷蔵庫に入れていない「野菜」
② 温度が上がりやすい「冷蔵庫」の中のもの。
③ 冷蔵庫よりは低温を保ちやすい「冷凍庫」の中のもの。
④ 温度に左右されにくい「レトルト」「防災食」「常温保存品」

<72時間程度で復旧しそうな短期的な場合>
冷蔵庫は停電しても扉を開閉しなければ冷気は3~4時間は保たれます。
そこから徐々に庫内温度が上昇します。

停電後3~4時間経っても復旧しない場合は、傷みやすい食品や賞味期限の短い食品をさっと取り出して順番に消費するのが基本です。
72時間・1日3食を想定して食事の準備をしましょう。
・注意点
① 停電していても冷蔵庫・冷凍室のドアは開けない
② まず冷蔵庫内でも常温では食べるのがNGになるもの、冷蔵庫内温度が高くなったら食品の安全性が保てないもの、から食べる
※ 肉や魚の生鮮食品、乳製品は冷蔵庫から取り出してすぐ食べる。
※ 可能なら早めに調理して食べる。
③ 常温備蓄と冷蔵備蓄を組み合わせて、カセットコンロを使って調理する。
カセットコンロがあれば、フライパンとフタを使って調理も可能。パッククッキングなどもできる。
④ 24時間経過して復旧が見込めない場合、冷凍庫内の食品をカセットコンロを用い、調理して食べる。
※さらに中型バッテリーがあればIH調理器具での調理も可能です。

EX)避難中の調理方法
・パッククッキング
・カセットコンロ+フライパン+セイロ
・メスティン+固形燃料 調理例はこちら>
・スープジャーなどの保温調理器具を使った料理 調理例はこちら>

<72時間以上の大規模災害の場合>
72時間と思って、計画なく食べたら、その先に食べる物がなくなる可能性があります。
1日3食でも夜は軽めにするなどして、量を加減する必要がでます。
タンパク質が少なく、炭水化物が多めになるので、サプリ、幼児向け発育サポートミルクなども使って体内バランスを整えるよう意識しましょう。
調理用の食材が少ないので、マンネリ化を防ぐために味変して、飽きない工夫も大事です。
冷蔵庫内の食品の食べ方は上記と同じ。冬で腐る心配が少ないのであれば、塩ポトフなどを多めに作って、日毎に味変して食べるのもよいでしょう。
※冬場など食品の温度が10℃以下で保存できる場合。
 調理・喫食後は、すみやかに冷ますこと、再喫食の際はグツグツするまで加熱することが条件です。

EX)冷食はレンチン以外でも温めて食べることは可能です。
1.湯煎にかける
2.蒸す など

※編集部より
自然解凍で食べられる冷凍食品は、解凍状態をみてお早めにお召し上がりください。さらに、味の素冷凍食品の「ギョーザ」は停電後24時間経過しても、いつも通り調理でき、おいしく食べることができることが確認されています。(冷凍食品業界で初の事です。) 詳しくはこちら>

Q 質問:高層マンションでの注意点

高層マンションで大きな地震が起きたときに気をつけなければいけないことは?

A:回答
そもそも高層マンションやタワーマンションは比較的大災害に強いと言われています。1981年に適用された耐震基準の建物は震度6強から7程度の地震でも倒壊しないような構造基準に設定されています。タワーマンションでは免震や制震構造等の最新の建築技術を用いた建物も多く、倒壊などの心配はほとんどしなくて良いと言えます。
高層マンションならではの被害といえば、ライフラインの断絶です。
まず、ほとんどのエレベーターは震度4以上の地震が発生すると緊急停止するように設置されています。エレベーターが復旧するまでの移動手段は階段を徒歩でとなります。高層階になればなるほど、上下の移動が困難となり、備蓄品等が不十分だと日々の生活が難しくなります。

救援物資の配布等を受けても、水など重いものを部屋に持って帰るためには非常階段を上って部屋まで行かねばなりません。なので、そのリスクを考えると、水・食料・トイレ、この3つは備蓄を豊かにしておく必要があります。
また、ポータブルのバッテリー(ソーラーチャージャー使用がオススメ)なども用意をして、電気の確保もしておくと豊かな在宅避難ができると思います。
そして体力をつけておくこと。普段から歩く、階段を上がる・降りる、をしておく必要があります。また重い荷物を背負って階段の登り降りも体験して自分の体力を把握しておきましょう。

昔は地震があればお風呂のバスタブに水を溜めて、その汲み水でトイレを流せば良いと言われてきました。近年ではこれはNGです。配管がずれたり割れたりしていた場合、汲み水で流したトイレの汚水は階下に漏水します。過去には裁判になったケースも多々あります。今は汲み水を使って流すのではなく、災害用トイレを使用する方向に変わってきています。

災害時にはエレベーターが利用できなくなることの周知の徹底も必要です。エレベーターが緊急停止した際は最寄り階で停止します。停止した階で速やかに降りることの周知も混乱を避けるためには重要。高齢者や怪我人などの移動に必要な担架などの資機材配備の検討も対策の1つとなります。

また日ごろの備えが必要なのは、どんな状況に住んでいても同じこと、災害の規模が大きければ大きいほど重要なのは、住民同士で助け合えるかどうかです。自らの命を護り共に助け合う地域ぐるみでの防災体制の構築が重要。普段からの挨拶によってコミュニケーションをとり、自分がこのエリアに住んでいるのだということを認知してもらうことが大切です。最近の高層住宅では、住民同士の関わり合いが少なくなっていたり、自治会そのものがなかったりもします。
災害時にはどれだけの人と知り合いで協力し合えるかがキーポイントとなります。まずは笑顔で挨拶をする、これから始めましょう。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2024/5/20掲載