検索
商品情報
レシピ
知る・楽しむ
企業情報
ニュース
お問い合わせ
もしもの時に役立つ防災食コラム

防災リュック作ってますか?

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。


2024年に入ってから、日本はもちろん、世界中で災害が頻繁に起きています。4月4日に台湾付近を震源とする地震が起きて、沖縄や宮古島に津波警報が発令され、予想の高さは最大3m。宮古島では20cm、与那国島では30cmの津波が到達しました。被災するのは住んでいるところかもしれないし、観光先かもしれない。自宅でも、避難先でも、必要なのは防災リュックです。
しかしこれだけ災害が起きていても、防災リュックを用意していない人がまだまだいます。今回は防災リュックについて色々とお話ししたいと思います。

防災グッズ・防災リュックって何?

地震や豪雨が起きるたび、きちんと備えなくては・・・と不安になりながらも、何から準備すれば良いのか分からず手つかずだったり、数年前に防災グッズを買い揃えたきり、見直していない人もいるのでは?そもそも防災リュック、防災グッズって具体的に知らない方もいらっしゃいます。

防災グッズというと何か“特別なもの”と捉えがち。しかし避難生活に関わるものは全て防災グッズです。ラップやガムテープなど身近にあるものなど、災害時に役立つものはすべてが該当します。私は家の中にあるもの、100円均一ショップで売っているもの、ホームセンターに売っているもの、これらで防災グッズは用意できると思います。そして実際に2018年大阪府北部地震で被災をして、充分であることを確認しました。なので、必ずしもセットで買わなくてもよいし、プロ仕様のものをたくさん用意する必要もありません。あなたがどんな避難生活を送りたいかによってその中身は変わります。

まず、防災グッズには0次から2次までの準備段階があります。
【0次】
「防災ポーチ」のような普段の外出時でも持ち歩けるくらいの必要最低限のもの。災害トイレ一回分、小さなライト、レスキューシート、防災笛、ウェットシートなどを小さなポーチに入れておくと良いでしょう。

【1次】
災害が起きてすぐ避難が必要な時に持っていく3日分くらいのもの。こちらは“第1次持ち出し袋”といって、いわゆる「防災リュック」に入れるものを指します。

【2次】
ライフラインが断たれてしばらく自宅もしくは避難所で過ごす場合に、家族全員が1週間くらい過ごせる量の備蓄のこと。

このように3つの段階に分けて考えます。そして1週間程度の備蓄は災害用にわざわざ用意するのではなく、普段の生活の中でローリングストックをしながら備蓄をするというフェーズフリーな考え方が浸透してきています。

防災リュックを用意する人としない人では、こんなに未来が変わる

国土交通省が2021年に行った「国民意識調査」によると最近2年から3年に行っている自然災害への対策として「食料・水などの備蓄や非常持ち出しバッグなどの準備をしている」と回答した人は36.8%でした。約6割以上の人は「いわゆる防災リュック」の準備をしていないことになります。
私は今までいろいろな被災地に行って、避難生活を送っている方々とたくさん会ってきました。その時にも、避難所に来ていても、防災リュックの有り・無しで避難生活が大きく変わることを目の当たりにしました。
困っているから誰かが助けてくれると思ったら大間違いです。よっぽどの余裕がない限り、それも知っている人にしか手を貸すことができないのが災害心理。どれだけ困っていても、人は余裕がなければ人に何かを渡さないのです。なので、日本に住む限り、私は一人ひとりが防災リュックを用意してほしいと心から願っています。

リュックの中身は一人ひとり違う

災害はいつ、どこで起こるかわかりませんが、事前に防災リュックを用意しておくことで、万が一の際にもすぐに避難行動へ移ることができます。
また、避難所では、生活に必要なものが十分に届かない可能性も考えられます。救援物資が届くまでの間、生活に必要なものを備えておくと、慣れない避難所での生活も安心できます。

災害対策をするとなると、闇雲に不安を感じる方がいます。自分がどんな被災に合う可能性があるのか?それによって準備するものは大きく変わります。津波や浸水の可能性がない場所に住んでいるのに、水害対策を必要以上にしている人。地震対策をしなくてはいけないのに全く用意をしていない人。本当にいろんな人がいます。まずは、住んでいる地域のハザードマップを確認してください。マンションか戸建てか、1人暮らしか子どもがいるのか、ペットがいるのか、防災弱者がいるのか、いないのか。自分の置かれている環境を冷静に分析しましょう。そして周りの環境によってどんな状況が起こり得るのか想定し、自分にできるところから揃えましょう。

防災リュックは、基本的には1人につき1つを用意します。子どものいる家庭では、子ども用の防災リュックも用意しておきましょう。防災リュックの重さの目安としては、一般的に男性は15kg、女性は10kg程度といわれています。ただし、あまりにも重過ぎると避難行動に支障が出てしまうため、その人に合った中身を選ぶ必要があります。
防災リュックには3日間避難して生きていくために必要なグッズを入れます。水や食料はもちろん、排泄対策、衛生物品、着替え、懐中電灯、災害ラジオなどが入っています。たいていは調理をしないで食べられる食品が入っていることが多いのですが、キャンプに行ったり、登山を趣味にされている人などは、小型のカセットコンロやキャンプ用品を入れることもあります。

その中身は、一人ひとりのニーズによって必要なものが違うため、基本のものは同じでもオリジナリティーが求められます。防災リュックの中身は、家族構成や状況によって変わります。妊娠中であれば衛生用品や母子手帳など、高齢者であれば介護用品やおむつなどが必要になるでしょう。また、ペットを飼っている場合には、ケージや餌などを用意しておかなければなりません。
災害時を想定し「自分たちにはどのような備えが必要なのか」をしっかりと考えて用意しましょう。

防災リュックの中身の選び方

あなたは日常生活の中で①睡眠、②食事、③衛生 一体どれが譲れませんか?それによって避難生活の中で用意するものが変わってきます。どこでも眠れる人は睡眠に対しての準備は少なくても良い。だけど、枕が変わったら眠れないとか、人の出す音が気になったら眠れないなどという人は、それに対するグッズが必要になってきます。トラベル用の枕や、耳栓、肌触りの良いタオルなどもあったほうが良いかもしれません。食事も衛生についても同様で、家族一人ひとりニーズは違います。なので防災リュックは1人1つ用意してください。

基本的な中身

「大人1人あたりに必要な3日間分の備蓄品の量」は、こちらのコラムでも紹介しています。
今回は、防災リュックとして持ち出すことを前提でご紹介します。

1. 水・食料品

人間が生きていくうえで、水は必要です。飲料用以外にも、汚れを落としたり、衛生面の保持に使ったりと、水にはさまざまな用途があります。防災リュックに入れる量としては、最低でも500mlペットボトルを3本(約1日分)は確保しておきましょう。

レトルト食品や缶詰、栄養補助食品など、非常食として日持ちする食品を入れましょう。水やお湯がないと調理できない食品よりも、すぐに食べられる食品の方がおすすめです。

2. 貴重品

家の鍵や通帳、財布、印鑑、身分証などの貴重品は、忘れずに持ち出しましょう。
ある程度の現金も入れておくと安心です。

3. 衣類・下着

衣類や下着は、最低でも1セット分+予備は必須。同じ衣類を長い間着用することは衛生面もよくありません。
季節によって必要な衣類は変わるため、防災リュックの中身は定期的に見直し、必要な衣類や下着の入れ替えをしておきましょう。

4. 軍手

ガラスや瓦礫から手を保護したり、物を掴んだりする際に役立ちます。防災リュックに入れる場合は厚い生地の軍手か、より丈夫な防災用の手袋がおすすめ。

5. 洗面用品

歯ブラシや歯磨き粉などの洗面用品。水が不要なシャンプーなども入れておくと、より衛生面を保持できます。

6. タオル

水や汚れを拭き取ったり、怪我をした際の応急処置に活用したり防寒や敷物としても活用できるため、最低1枚は防災リュックに入れておきましょう。

7. 携帯電話用充電器

災害時でもスマートフォンの数々の機能が役立ちますが、充電が切れてしまっては使い物になりません。そのような事態に備え、携帯用充電器(モバイルバッテリー)を防災リュックに入れておけば、停電してもスマートフォンの充電ができます。

8. 雨具・防寒具

レインコートやウィンドブレーカーなどの雨具、防寒具は、特に寒い季節には必需品です。防災用に売られている「折り畳めるアルミシート」も一緒に入れておくと、より万全な寒さ対策になるのでおすすめです。

9. 防災笛

防災笛は、 声の届かない場所に閉じ込められてしまった際に周囲の人へ助けを呼べるため、 防犯用のグッズとしても活用できます。

10. ペン・ノート

ペンやノートなどの文具類は、スマートフォンが使えない状況でメモを残したい場合、家族や周りの人たちと情報を共有したい場合などに使えます。

このほか以下のグッズもリュックの中身に入れておきたいものです。
11.携帯トイレ
12.救急グッズ
13.懐中電灯
14.携帯ラジオ
15.トイレットペーパー
16.マスク
17.手指の消毒用アルコール
18.ウェットティッシュ

EX.女性に持っていてほしいもの

1.生理用品 2.サニタリーショーツ 3.中身の見えないゴミ袋 4.防犯ブザー

子どもがいる場合に必要なもの

1.子ども用おむつ 2.粉ミルクや液体ミルク 3.哺乳瓶 4.離乳食 5.抱っこ紐 6.お尻拭き 7.子ども用の靴 8.携帯カトラリー 9.おもちゃ

高齢者に必要なもの

1.大人用おむつ 2.介護用品 3.入れ歯・洗浄剤 4.補聴器・メガネ

あくまでも基本的なものですが、何も欲しいものがない場合は、これらのもので組み合わせて生み出す柔らかい頭も防災グッズとして、頭の中に備蓄しておいてくださいね。

防災リュックを準備していた人・していない人の違い

①安全性と生存率の差:
災害時に防災リュックを持っている人は、非常食や水、防寒具などの必需品があるので安全性や生存率が高まります。一方で、防災リュックを持たない人は、資源の不足や必需品の不足により生存率が低下する可能性があります。

②復旧と支援への依存度の差:
防災リュックを持っている人は、災害直後もご自身や家族が自立しやすく、復旧や支援への依存度が低くなります。一方で、防災リュックを持たない人は、他者の支援や復旧作業への依存が高まります。

③心理的な影響の差:
防災リュックを持っている人は、災害時のストレスや不安を軽減するための準備ができており、心理的な影響が比較的軽減される可能性があります。一方で、防災リュックを持たない人は、災害時の混乱や不安が増す可能性があります。

これらの要因から、防災リュックの作成は災害時の安全性や生存率を高めるだけでなく、心理的な影響や復旧作業への依存度にも影響を与えることが示唆されます。これは大げさな話ではなく、たくさんの被災者へのヒアリング、そして私が関わってきた方々を見てデータから出した考察です。

あなたは被災した時、どちら側にいたいと思いますか?災害が起きても自分の用意したもので、自分の目指した避難生活ができる方が良いのか、それとも不安だらけの生活が良いのか、それはあなたが選べるのです。その選ぶときに必要なものが防災リュックだと私は思っています。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2024/6/20掲載