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もしもの時に役立つ防災コラム

忙しい日にこそ買い物にいかずにご飯をつくる

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。

コロナ禍の自粛生活を経験して、自炊が増えたという人も多いこの頃。食材の買い出しや、頻度にはかなり差があると思います。毎日使うぶんだけ買う人もいれば、数日おきや週1など、決まったペースで買う人もいます。中でも毎日丁寧な暮らしをしたい、特に食事に配慮して暮らしている方や高齢の方が毎日買い物をしている傾向が強いようです。もちろんそれも良いのですが、災害時のためにも“家にあるもので食事を作る”経験も大事です。今までは家に“あるもの”で作るというと、なんとなく質素で、横着に作るイメージでした。しかし普段でも忙しい時こそおいしく豊かな時短料理をするように変えてみませんか?
今回のテーマは忙しい時にこそ買い物に行かずにご飯を作る。この裏テーマは・・・災害時に家に“あるもの”で、いつもと変わらないおいしいご飯を作る、なのです。

忙しい時に何を食べていますか?

あるデータによると、大抵の方はカップラーメン、菓子パン、ゼリー飲料、おにぎりという結果でした。この回答者の中には、会社にいる方も含まれるので調理をする前提ではないと思います。しかしそんなに時間をかけなくても、おいしいご飯は作れることをご存知でしょうか?最近ではインスタントやチルド商品、冷凍食品も多様化し、いろんなメニューが出ています。ワンプレートの冷凍商品もあり、便利になったなと感じます。このような食品を備蓄しておけば、忙しい日にわざわざ買い物に行かなくても、おいしくて豊かな食事が取れます。
でも今回は、そこからもう一歩踏み込んでみましょう。調理はするけど手間も時間もかからない。そんな料理をしていただきたい。なぜならそんなテクニックは災害時に役に立つからです。

私が普段からよく使うのはスープジャー

スープジャーとは、その名の通りスープなどを入れて持ち運ぶための容器です。ステンレス製で真空二重構造のため、容器の中身を保温・保冷することができます。温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま、一人分(400ml前後)をおおよそ6時間ほど保つことができます。出かける前に入れたアツアツのスープも温かい状態で食べられるため、出勤時のランチなどにも便利です。ランチに使うものを普段から何に使っているのか?私はこれを調理器具として使っています。
高い保温力を生かして「朝、熱湯と食材をいれておき、ランチ時にはスープの完成!」という“ほったらかし調理”も可能なんです。これを使えば、トロ火調理しているのと同じ!ゆっくりと加熱されるので、食材は柔らかく、しかし煮崩れもしません。

スープジャーは使用前に必ずすることがあります。熱湯(分量外)を入れ、フタをせずに5分以上保温する。これが必須です。このジャーを温めるのに使ったお湯は洗い物をするときに使うので捨てないでください。その上で冷蔵庫の食材や常備野菜などを組み合わせてスープを作ります。おかゆも作れるので、スープジャーは2個持っています。

【さつまいもときのこの具だくさん豚汁】

■材料(1人分)
豚バラ30g、さつま芋20g、大根20g、人参20g、ゴボウ20g、干し椎茸1枚、ブナシメジ5本
こんにゃく少量、水120cc(熱湯に沸かす)、出汁の素小さじ1、合わせ味噌大さじ1

■作り方
① 事前にスープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをせずに5分以上保温する。(この湯は洗い物に使う)
② 食材は鍋で5分加熱(油で炒める、または茹でる、いずれも分量外)してから出汁の素をスープジャーに入れる。
③ 味噌と熱湯を注いでふたをして1時間おけば豚汁の完成!

【サバ水煮ときのこのおかずスープ】

■材料(1人分)
サバ水煮缶 1/2缶
しめじ(軸を切り落としてほぐす)…1/2株(50g)
椎茸(軸を切り落として薄切り1枚)
青ネギ(小口切り)…適量
水…200ml
A「丸鶏がらスープ」…小さじ1/2
 ごま油…小さじ1/2
 醤油…適量
 コショウ…適量


■作り方
① スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをせずに5分以上保温する。(この湯は洗い物に使う)
② 鍋に水気を切ったサバ缶の中身を入れてざっくりとほぐし、しめじ、椎茸、水、Aの調味料を加える。
③ 5分中火で加熱する。
④ スープジャーの湯を出して、鍋の中身を入れて蓋を閉める。
⑤ 1時間後にできあがり。
⑥ お好みで、食べる直前に青ねぎをのせる。

【中華かゆ】

■材料(1人分)
生米…大さじ3
「丸鶏がらスープ」小さじ1/2
湯…適量

■作り方
① スープジャーに直接生米を入れる。
② サラッと食べたいならお米大さじ3杯。(お米の粒々感も楽しみたいなら大さじ4杯)
水を注いでシェイクし、スープジャーの中で洗米し水だけを捨てる。無洗米ならこの作業は省いてOK。
③ 熱湯を注いで3分おく。(この時のお湯は必ず沸かしたてのものを使う。ぬるいとお米に芯が残る)
④ お湯だけを捨てて、「丸鶏がらスープ」を入れる。
⑤ 再び沸騰したてのお湯をフタの下ギリギリまで入れる。(この時のお湯も沸かしたてのものを使う)
フタとの間にすき間があると温度が下がりやすいので、上限ギリギリまで注ぐのもコツです。
⑥ 2~3時間で食べられます。
※6時間以内に食べきるようにしてください。(食中毒予防のため)

ステンレスジャーはパスタがゆがけます。パスタを半分に折り、ステンレスジャーに入れ。そこにヒタヒタになるように湯を入れて蓋を閉める。本来加熱する時間の2分増しで放置。湯を捨てて出来上がり。

ホットサンドメーカーは万能調理ギアです

朝食やキャンプなどの食事で人気のホットサンドが手軽に作れる「ホットサンドメーカー」。食パンに好きな食材を挟んで数分焼くだけの簡単調理で、アレンジレシピも気軽に楽しめるのが特徴です。私はこれをパン以外のものを挟んで調理するのに使います。冷凍餃子や冷凍シューマイなどをホットサンドメーカーで焼いています。短時間で表面はカリッ、パリッ、中身はもちっとして食感が最高なんです。冷凍チャーハンは短時間で火が入ります。お子さんがやってもこぼさずに作ることができます。最近のお気に入りは、インスタント袋麺の麺をホットサンドメーカーで蒸して焼きそばとして食べること。予想を超えたもちもち感でした。

【インスタントラーメンで作る焼きそば】はこちら

ひらめきとアレンジで「手抜きでもおいしい」が可能になる

料理というのはとても不思議です。メニューも調理法も、人によって偏っているかもしれない。同じ料理を友人と作ってみると、野菜の切り方や作る過程が違ったりして発見があります。それを私はとても面白いと感じます。料理の引き出しを増やすポイントは、その違いを面白がれるかどうかだと思うのです。(ある意味、洗濯物のたたみ方や掃除の仕方なんかも同じかもしれませんね)
焼きそばを作るときに、こうでなくてはならないと言うルールは実はありません。でも人は「こうでなければ」と頑なにこだわりがちです。家の中にあるもので作り方をアレンジしたり、食材を代用したりすれば、わざわざ買い物に行かなくても作る事は可能なのです。
何もない時、つまり余裕があって今すぐ必要という切羽詰まった感じがない時。そういう時にチャレンジしておけば、失敗すら何とかリカバリーできるものです。
私の場合、料理のたいていの失敗はカレー味にしてしまえば大丈夫と思っています(笑)。ひらめいたときに試してみる。1回目でうまくいかなくてもアレンジしていけば自分の口に合うものはできます。たった1回で失敗したからこれはやらないと思ってチャレンジしない。これがとても残念だなと私は思っています。何事も3回はチャレンジする。私はそういうふうに決めてやっています。
前回にもお伝えしましたが、このような調理法は、私は災害時だけではなく、日常的にしているため、気軽に手慣れて作ることができます。作り慣れているというのは、災害時にはとても大事なことです。非日常な状況は受け入れることも困難で、いつもできることができないことを思い知らされます。食事は肉体的な部分だけではなく、精神的にも大事な要素です。いつもと違うものばかり食べていると心が落ちて鬱になることもあるのです。

ないから諦めるではなく、なくても代用する

このフレキシブルな考え方、実はトラブル回避においてとても大事なことです。普段からいろいろ試しておけば、いざと言う時に選択肢が増える。この選択肢がちょっと増えると、人間は心がとても安定するのです。そしてどんな状況でも食べるという行動は人を元気にしてくれます。ちょっとでも食べる意欲があり、おいしいと感じられる気持ちがあれば前向きになります。

私たちレスキューナースは、どんなに過酷な現場でも食べることを大事にしています。なるべく日常に近いものを食べるように心がけています。温かい食事は心をホッとさせます。しかし現場ではなかなか温かいものを口にすることは難しいのです。非日常の中で、食べるものも非日常のものばかりになると、心がすさんで落ち込んでいきます。食材も調理法も限られています。だからこそ味は日常に近づける。できることなら温度も近づける調理法を習得しておくのです。

人間は常日頃やっている事しかどんな時でもできません。知識だけを知っていても、実際にやったことがなければ行動にはつながらないのです。「ないから諦める」ではなく、「なくても代用する」。自分が欲しいものを手に入れる。食事もあきらめない。なるべくその欲しいものに近い状態を作るようにする。このスタンスがどんな状況でも、今を精一杯生きるにつながります。このスタンスはものを備蓄しているだけでは手に入れられません。行動と経験が伴ってこそ、スキルとして自分を助ける力になります。

忙しい日だからこそ買い物にいかずにおいしいもの作って食べる。これがこんなことに繋がるなんて誰も思いません。そんな大袈裟なと思うかもしれません。しかし、それでもいいのです。とりあえず、次の週末は、買い物に行かず、家にあるものだけでなんとか作ってみましょう。1回が、2回になり、知らない間にその行動が日常になります。日常でやってるテクニックが、防災となり、生きるスキルにつながる。いざという時に必ずあなたを助けるスキルになるはずです。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2023/4/20掲載