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もしもの時に役立つ防災コラム

投票アンケートから見える
『宮崎地震と南海トラフ地震への注意喚起に伴う今の防災意識』

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。

はじめに

2024年8月8日に発生した宮崎地震を契機に、南海トラフ地震への警戒が強まってきています。
防災や備蓄への意識が今年どう変わったかなどのご意見を、味の素冷凍食品コミュニティサイト内の「みんなで投票」で伺いました。
この投票アンケートの結果から、皆さんの心情と行動傾向、さらには今後注意すべき点や陥りやすい課題について、4つの視点から考察していきます。

■「みんなで投票」 実施期間:2024年10月9日~2024年10月23日

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1. 防災意識と行動の現状

投票の結果からまず注目すべきは、44%(208票)の方が水や食料品、防災用品を備蓄しているという点です。この数値は比較的良好であり、回答いただいた方の中には実際の災害を意識し、準備を進めている方がいることを示しています。しかし、同時に38%(179票)の人々が「意識はしているが備蓄できていない」と回答していることから、意識と行動のギャップが存在していることも明らかです。
さらに、10%(47票)の人々が「備蓄は考えていない」としており、これは防災に対する緊張感が不足していることを示唆しています。また、7%(35票)の人々が「防災について情報収集をした」と回答していることから、これまで防災情報が不足していたり、防災に対する関心の低かった人が少なからず存在していたことがわかります。

2. 個人の防災意識の多様性とギャップ

アンケートからわかるのは、回答いただいた方の防災意識における多様性です。準備を既にしている人と、準備をしようと考えているが行動に移していない人、さらには完全に無関心な人との間に明確な差が見られます。
防災意識の高い方は、過去の被災体験や災害に関わる報道の影響などを受けていると思われます。一方で、「備蓄は考えていない」10%の方々は、情報不足だけではなく、「自分には関係ない」「自分だけは大丈夫」という思いからそうなるのかもしれません。個人の心情の多様性は、正常性バイアスや情報収集等を自分ごとと捉えているかによって大きく差が出ると思われます。

3. 不足している防災対策と具体的な施策の必要性

防災に対する意識が高まっているものの、具体的な行動にはつながっていないことが明らかです。特に、38%の人々が備蓄を意識しながら行動に移していないという点は、何らかの障壁が存在すると考えられます。

たいていの方は①お金がない②置く場所がない③めんどくさい、という理由を挙げることが多いです。それは災害と日常を分けて考え、保管しようとするからではないでしょうか。そんな方にこそ私はフェーズフリー防災を提案したいと思っています。災害のためにわざわざ備蓄をするのではなく、普段から使っているものを少し多めにして使いながら買い足すローリングストックをおすすめしています。

備蓄方法を紹介したコラムもありますので、これをきっかけに一日でも早く行動に繋げてください。
備蓄はわざわざしない
簡単!時短!ローリングストックの極意
冷蔵庫は備蓄庫

4. 備蓄の陥りやすい罠と対策

「水や食料品を備蓄した」を選んだ44%の皆さんは、定期的にその内容を見直し、期限切れ前に食料品などを活用する習慣を持ちましょう。ここで陥りやすいのは、備蓄したいと思っても、実際の管理が疎かになり、役に立たない物が増えてしまうことです。このような作業を習慣化するためには、家庭内での継続的な見直しや、地域の集会などで協力して行うことが有効です。

回答いただいた皆さんのコメントから

今回の投票アンケートの中で、いただいたコメントにお答えします。

コメント1 「賞味期限の管理が面倒です」

そんな人にこそ、フェーズフリー防災備蓄をおすすめしたいです。防災と日常を分けて保管しないのがポイント。普段から使うものを3つ多めに購入する。それをカテゴリごとに箱に分けて保管します。買ってきたものは後ろに入れて手前から使うようにすると賞味期限オーバーを防ぐことができます。

コメント2 「備えておかなければという気持ちはあるものの、どこかに備えなくてもなんとかなるという気持ちも」

あなたが最低限の避難生活を想定しているのであれば、何とかなるかもしれません。しかし実際、人は自分のことで精一杯になると、知らない誰かに自分の備えを分けたりすることは、ほとんどしません。そして残念ながら行政は、あなたが思うような救援物資をあなたが思うタイミングで渡してくれるわけではありません。
今、防災を自主的にされている人たちの中では、自助ができていない人に対して共助することは嫌だという風潮が高まっています。それはもしかしたら家庭内でもあるかもしれません。

30年以内に大きな地震は必ず来ます。地震以外の災害だってあり得ます。なので備えなければという気持ちがあるのであれば、せめて水と災害トイレだけでも備蓄して欲しいなと思います。

コメント3 「毎年9月に非常持ち出し袋の点検をしています」

毎年確認されているのはいいことですね。賞味期限だけではなく、一年で自分の防災テクがアップして必要ないもの、あえて必要になったものが見つかるかもしれません。可能なら季節の変わり目に衣服だけでも見直しされるとより良いと思います。

コメント4 「自然災害が甚大化しているように思われ、ローリングストックしながら備蓄を少しづつ増やしています」

とても良いことです。最近は季節に関係なく、いろいろな災害がおきています。少しずつ増やすことで継続してください。

コメント5 「災害のない地域で意識が低くて、でも最近防災グッズの購入を検討してます」

いい傾向です!そしてそこから後もう一歩!「防災グッズの購入を検討する」から、「とりあえず一個買ってみる」になればさらにバージョンアップです!

コメント6 「近くに自衛隊基地が有るので、逃げ込めば良いと安易に考えている」

災害時に自衛隊基地に逃げ込むことについて、基本的には一般市民が自衛隊基地に無断で立ち入ることはできません。自衛隊基地は防衛のための重要な施設であり、セキュリティが厳重に管理されています。
ただし、災害発生時には、自衛隊が救助や支援活動を行うことがあります。その際には、被災者や避難者に対して適切な支援を行うための避難所が設けられることがあります。具体的には、地域の防災計画や自衛隊の対応に依存するため、事前に地元の防災情報や自衛隊の活動内容を確認しておくことが重要です。
もし災害時に避難が必要な場合は、近隣の公的な避難所や地域の指示に従うことをおすすめします。

まとめ

今回の投票アンケートの結果から皆さんの防災意識は高まりつつあるものの、具体的な行動に移すには至らないギャップがあり、その理由にはいくつかの課題が存在してることがわかりました。
防災対策をしている人は、自分や大切な人が被災経験をしたことが、きっかけになっている。そして無関心な人はお金、時間・場所等の問題でできないという理由や、そもそも関心を持っていない方も。
人は自分の体験をベースに物事を考えます。なので自分が被災したことが無かったり、被災の経験者が周りにいない場合、防災をイメージできないのは仕方ないかもしれません。しかし想定されている首都直下型地震や南海トラフが発生した時の災害は、過去の被災体験でさえも大きく超えるような災害が起きると言われています。

「今までなかったから大丈夫」ではなく、「これからは何があるかわからない」と思って、学びを深め準備をしてほしいと思います。しかし、多くの防災教育や防災イベントでは参加しようという気持ちにもなってもらえません。気軽にできて面白いという違った切り口での防災教育が必要だと思います。
防災というものが、そんなに非日常のものではなく、そして大掛かりな大変なことでもなく、気軽にできること。私はそれを具体的に伝える、そしてそれが皆さんの行動のきっかけになればいいなと思っています。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2024/11/20掲載