冷蔵庫の活用ができたら
もしものときに備える災害用の備蓄。そう聞くと缶詰やレトルト食品などの非常食につい目がいきがちです。実はもっとも活用できるのは、いつも使う冷蔵庫の中身。ちょっとした工夫や日頃からの心掛けで冷蔵庫の災害時の対応力はぐんとアップします。そして災害時だけではなく、普段の生活の中でも頼れる頼れる備蓄庫になります。物価の上昇で買い物を控える家庭も増えてきました。また、在宅ワークで家にいる時間が増えた家庭もあります。わざわざ作るのではなく、あるもので済ますご飯の率も増えています。実はそのテクこそが防災対策。つまり冷蔵庫をうまく備蓄庫として活用できたら、日常の小さなトラブルから大きな災害時の対策まで、新たな防災テクになると思います。
カギは「冷凍室」にある
一番身近な備蓄庫である冷蔵庫。地震などで長時間停電してしまったら、冷蔵庫内の貴重な食料は全部ダメになる?いえいえ、そうではありません!その保冷能力を最大限生かしながら中の食料を無駄なく使いきる方法があるんです。
停電のときに冷蔵庫の冷たさを長持ちさせるポイントと、普段からできる停電対策をまとめました。
冷たさが持続するのは最大3時間程度
停電で電源が切れても、すぐに冷たさがなくなるわけではありません。3〜4時間はある程度品質が保たれる※と言われています。しかし、これはドアの開閉をまったく行わなかった場合です。ドアを開けてしまえば、冷気がどんどん逃げてしまいます。なるべく冷蔵庫のドアを開けないようにするのが、中の冷たさを保つための大きなポイントです。※一般社団法人日本冷凍食品協会HPより
対策① 中身を把握してドアの開閉は最小限に
ドアの開閉を少なくするためには、冷蔵庫内に何があるかを把握しておくことが大切です。余裕があれば中に何が入っているかを紙に書き出し、使う食材の優先順位をつけて計画的にドアを開閉するようにするのが理想的です。
停電が長時間になると徐々に庫内の温度は上がって、中の食材も傷みやすくなります。なるべく食材を無駄にすることがないように、特に傷みやすい肉や魚、乳製品は早めに冷蔵庫から出し、可能であれば加熱調理するなどして優先的に食べてしまいましょう。
また、家族にも必ずドアの開閉を最小限にするように伝えましょう。
対策② 冷凍室内のものを冷蔵室に移す
日ごろから、冷凍室はスペースの7~9割を目安に食材を詰めておくこと。停電時に、食品自体が保冷の役割を果たしてくれます。
冷凍室に入っていたものを冷蔵室に移すと、室内の冷たさがより長持ちします。このとき、入れる場所に気をつけてください。冷凍室から出したものは冷蔵室の上の方に入れると良いです。冷気は上から下に流れるのでより効率的に冷蔵室内を冷やすことができます。
例えばペットボトルの水を凍らせておくと、これも保冷剤代わりに。他にも、製氷機の氷がたくさんあると、氷をポリ袋に入れて保冷できます。溶けた後は飲み水になるので、ムダにはなりません。
冷凍室から冷蔵室に移すものは、保冷剤でも良いですし、溶けた後にすぐ調理に使える食材でも良いですね。
停電時には、冷蔵庫のドアをむやみに開け閉めするのは絶対にやめましょう。
一般的に冷蔵庫のドアを10秒ほど開けたままにするだけで、庫内の温度は約3℃〜5℃上昇してしまうといわれます。やむをえずドアの開け閉めをするときには、できるだけ短時間で済ませるようにしましょう。
食材を長持ちさせようと、冷蔵庫の中身をクーラーボックスに移す方もいます。
しかし、クーラーボックスに食材を入れるのはあまりいい方法ではありません。
クーラーボックスは内部が冷えるまでに時間がかかるため、かえって食材が傷んでしまう可能性があります。また、食材を移す作業でドアの開閉の回数が増えるため、冷蔵庫内の温度も高まってしまいます。
災害時には停電時間がかなり長くなることもあります。停電時には食材をそのまま冷蔵庫内に置き、ドアの開閉を減らして電気の復旧を待ちましょう。
単なる冷蔵備蓄から普段からの食事をサポートする冷蔵庫に変身させよう
我が家の冷蔵庫は他の家よりも中身が充実しているように感じています。いわゆる冷凍食品もたくさん入っています。自然解凍してもおいしい、ちょっと加熱でおいしい、を基準にして購入しています。ふるさと納税でいろんな返礼品を受け取ったおかげで、日常生活のメニューが増えました。そしておいしいものを食べる機会が増えて、幸せを噛み締めています。
おいしいってどんな状況にあっても元気の素。日常生活の中でも、「おいしい」のおかげで元気になったことがたくさんあります。体が疲れて料理できない。仕事で落ち込むことがあった。そんな時に冷蔵庫に私の好きな食べ物がある、それだけで気持ちが楽になる。その上、パッとできてすぐに食べることができるなんて最高ではありませんか?
大阪府北部地震(2018年6月)で被災した際、停電して電気が復旧するまでに2週間かかったことがありました。被災した時でもお腹は空く。ライフラインの代用になるものと食材が必要です。私は防災に全力をかけてやっています。だから準備はバッチリ!私の冷蔵庫は食材がたくさん入っていました。下味をつけた食材なども冷凍しています。つまり日常から冷凍庫・冷蔵庫を備蓄庫として使っているのです。被災時に家にあるもの+冷蔵庫の中にあるもので過ごす。いつもと変わらないものを食べることができるというのは、メンタルが安定するのでおすすめです。
では私がしていることを具体的にご紹介しましょう。冷凍室には、食品入りの保存袋がたくさん並んでいます。
中身はミニトマトやゆでたブロッコリーもあれば、刻んだキャベツやピーマンなどを合わせた野菜セットも。ヨーグルトを混ぜたみそに漬けた生サケ、ショウガを利かせたタレに漬け込んだ豚肉など、今はやりの「下味冷凍」もたくさんあります。これらは食事作りで余った食材や、時間がある時にまとめて仕込んでおいたものです。※ホームフリージングした食品は、なるべく早めにお召し上がりください。
私は仕事柄、出張が多いので、自宅にいる時はなるべく自炊するようにしています。とはいえ、毎回手の込んだ料理はできない。だからこそ色々と冷凍しておけば長期保存できて、忙しいときにまな板を使わず、時短調理で手軽に一品出来上がります、そして洗い物も減らせる。私はこうしたストックを常に切らさないようにしています。その理由は、もしものときの備えでもあるからです。少し手を加えて冷凍しておけば非常時でも野菜を補えます。下味冷凍した肉や魚はカセットコンロを使って焼くだけで、ホッとする温かいおかずになる。忙しい朝でも簡単においしいものが食卓に並びます。
そして私はフルーツアレルギーがあるため、食べられるものが限られています。だからこそ、食べることが可能なフルーツをちょっとずつ冷凍しています。他にも地方のお菓子なども冷蔵、冷凍庫に入っています。非常時は甘いものを口にすると緊張が和らぐので欠かしません。
備蓄の目安は7日分
「冷蔵庫は普段から災害時をイメージしながら使うことが大事」と私は講演会でもみなさんにお伝えします。まずは何が入っているのか、この把握が大切。そしてどこに入っているのかも把握しておけば、停電時に無駄に長い時間、冷蔵・冷凍庫のドアを開けなくても済みます。私の場合、冷蔵エリアも冷凍エリアも書類ケースや100円均一ショップのメッシュのカゴを使って区切っています。それはストックを管理しやすくするためです。このカゴの中では賞味期限の古いものが手前にくるように入れています。何がどこに入っているのかを明確にしたので、無駄な買い物をしなくなりました。そして料理する時も非常に楽になったのです。また自分だけではなく、家族みんなが「食材の住所」を知ることになったのです。
これは予想外のサプライズでした。私がいなくても常温にあるものと冷蔵庫にあるものを組み合わせて、適当にご飯を作ることができる。これは本当に助かります。冷蔵、冷凍、これをうまく使うのは、育児中の方や介護をされている方にもおすすめです。
家庭での食料や水の備蓄は平成25年、国の中央防災会議による南海トラフ巨大地震対策の最終報告を契機に、「7日分」を確保するように求められています。
南海トラフ地震対策リーフレット(令和元年6月版)
大規模な震災では1週間程度は電気やガスなどライフラインが停止したり、食料の供給が滞ったりする可能性があります。そして私たちが今後を考えて準備するべき災害は南海トラフ地震や首都直下型地震です。今までよりも被害エリアは大きくなるし、インフラの復旧も今までの災害のようなタイムスケジュールでは動けないと思います。そのため私は14日分は絶対に確保しています。それまで3日分だったのが大幅に増えました。災害時に食べるのは、まず冷蔵庫内の食品から。非常食は後回しです。最初の2、3日間は冷蔵庫の食品、次に冷凍庫の食品です。
停電しても慌てないための準備をしておこう
停電した時に頭をよぎる、冷蔵庫の食材たち。前述のとおり冷蔵庫の保冷期間は、一般的に3~4時間と言われており、停電時すぐに常温に戻ってしまうわけではありません。
しかし、いつ電気が復旧するかわからない状況では、冷蔵庫の保冷時間をなるべく長くキープしたいものです。その対策として保冷剤代わりにごはんやお茶を凍らせて保存しています。冷凍室に、ラップで包んだごはんや、水・お茶・スポーツ飲料などの冷蔵冷凍兼用ペットボトルを入れて保存しておきましょう。
冷凍ごはんや冷蔵冷凍兼用ペットボトルは、冷凍しておけば災害時に保冷剤がわりに使えるうえ、解凍すれば食料・飲料になるというメリットもあります。
普段からの準備で、冷蔵庫は最強の備蓄庫になります。今日からコツコツやってみましょう。