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もしもの時に役立つ防災コラム

ライフラインが断絶したら?

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。


2024年が始まりました。新年心新たに迎えた1月1日から、立て続けに未曾有の災害が起きました。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。被災者の方々、関係者の皆様に心よりお見舞いと、1日も早い復旧と皆さまのご健康を心よりお祈り申し上げます。

今回のテーマは「ライフラインが断絶したら?」。今回の地震で困っている被災者や関係者の方に、これから防災対策をする方に、知ってもらいたいと思っています。

当たり前にあるライフライン

ライフラインとは、「電気・ガス・水道などの公共設備、電話・インターネットなどの通信設備、物品・人の移動に用いる物流や公共交通機関」など、人々が日常生活を送る上で必須となる設備のこと。特に電気、ガス、水が使えているおかげで、私たちは豊かな暮らしを営むことが出来ています。日常生活だけではなく、見えないところで私たちの生活を支えているのもライフラインがあってこそ。文明社会に生きる私たちにとっては、まさに生命線。災害が起きると、この命綱が一瞬で断たれます。ライフラインが断絶された間は日常生活に制限がかかり、なかでも水道が止まってしまうと生活用水や飲料水の供給ができなくなり命の危機をもたらします。

大地震や台風・集中豪雨など、大きな災害が季節を問わず発生しています。私たちは過去に経験してきた災害が一番大きな被災だと思い込んでしまいます。しかし今回の令和6年能登半島地震を考えたら、それは浅はかな考えだとわかります。大災害で交通インフラが途絶えていると、救援物資が集まっても配る場所に持っていくことすら出来ない。状況が把握できないと、物資を求めている人がどこにいて、どれだけのものを準備したらいいかも把握できません。つまり日常生活だけではなく、救助の際にも影響があるのです。
「備蓄は3日分を」とよく言われますが、私は1週間分と言っています。3日分ではやはり厳しい。在宅避難であれば、ローリングストックで備蓄すれば、備蓄のハードルが下がります。

停電したらどうなるのか?

2011年(平成23年)に起きた東日本大震災では、関東地方でも電気の復旧完了までに4~8日かかりました。2018年(平成30年)の北海道胆振東部地震では、北海道全域で「ブラックアウト」が発生し、長いところで3日以上停電する事態となりました。もちろん、多くの大災害を受けて、国や自治体・企業などでも防災対策は進んでいます。東京都による「首都直下地震等による東京の被害想定」では、電気の復旧には約4日かかると想定されています。ガスや水道に比べて、復旧が早いとされているものの、数日電気が使えない状況はとても不便なのは間違いありません。具体的にいうと、家電、照明は使えない。パソコン、携帯電話、タブレット端末はバッテリーが切れたら使えない。また、政府が00000JAPANというWi-Fiを開通させたらインターネットは使えます。

停電したとき、まずやること

停電が発生したら、まずはブレーカーを落として電気機器のコンセントを抜いてください。ブレーカーを落としてコンセントを抜いていないと、通電火災のリスクが高まります。通電火災とは、停電が復旧した際に地震などによって傷がついたケーブルやゴミがついたケーブルなどに電気が流れて火花が散ることや、誰も気づいていないところで電気ストーブやアイロンの電源が入って布類などが燃えることで起こる火災です。

また、夜間の場合は懐中電灯やランタンなどで明かりを確保しましょう。日ごろから停電に備えて、各部屋や玄関、玄関までの通り道に懐中電灯を置いておくことをおすすめします。停電はいつどこで発生するかわかりません。一方、日ごろから災害への備えが十分にできていれば停電も乗り切ることできます。

停電したとき、やらないこと

屋外にいる場合、災害の発生で切れたり垂れ下がったりした電線は感電のリスクがあるので絶対に触れず、近づかないようにしてください。

家電では、冷蔵庫、冷凍庫のドアの開閉も「やらないこと」と家族に徹底しておくことが大切です。冷凍庫は、停電で電源を失っても、ドアを開けなければ3~4時間程度は冷えが保たれるので、ドアを不必要に開閉しないことがポイントです。冷凍室にすき間なく冷凍した食材を詰めておけば、凍った状態が保たれるといわれています。ラップで包んだごはんや、水・お茶・スポーツ飲料などの冷蔵冷凍兼用ペットボトルを入れて保存しておきましょう。ちなみに、味の素冷凍食品の「ギョーザ」に関しては、検証の結果、開封してない状態で24時間冷凍庫に置いていてもおいしく安全に食べることができるということがわかっています。

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事前にできる停電への備えや用意しておきたい防災グッズ

①ランタン、懐中電灯
夜間に停電した場合、避難するにも周囲の状況を確認するにも明かりが必要に。ランタンや懐中電灯は最低でも家族の人数分、1人1つずつ以上、可能なら両手が空くヘッドライトやネックライトが便利です。そして1部屋1灯をご用意ください。

②モバイルバッテリー、ポータルブルバッテリー、充電ケーブル
情報収集や家族との連絡手段として重要になるのがスマホやパソコンです。バッテリー切れ対策として、モバイルバッテリーやポータルブルバッテリーを用意しておきましょう。普段から2回分は充電できるものをカバンの中に入れておくと良いでしょう。バッテリーだけでは意味がありません。デバイスにあったケーブルもセットにしてください。

③ソーラ充電キット
災害時に太陽光発電で電気が使えると、停電の際の大きな助けとなります。電気が使えれば連絡や情報収集ができるので安心です。気温の対策ができる点もメリットで、高齢者や乳児がいる家庭では特に役立ちます。しかし夜間や雨の日はほとんど電気を発電できません。そのため、もしも停電・災害が夜間や雨の日に発生してしまうと電気を使用できません。

生きていくため、そして清潔な生活のために水は欠かせない

東京都水道局によると家庭で1人が1日に使う水の量は、平均214リットル(令和元年度)です。日本は水道水の安全性が高く、海に囲まれているため水資源も豊富な印象があります。少子高齢化で人口は減少傾向にありますが、各家庭に風呂があることが当たり前になり、トイレも水洗式になりました。昔と比べて水を使う機会は増えています。飲み水はもちろん洗面、手洗い、炊事、洗濯、お風呂、トイレなど水は生活に欠かせません。
つまり断水するとこのような活動はできなくなり、今まで当たり前にできていた生活が全くできなくなってしまうのです。

災害時に起こる断水の原因は地震によるものと停電によるものです。
地震による断水の原因は、水道管の破損や損傷です。水道管は地中に埋められており、地震による地面の揺れで継手部分が外れるなどして破損することがあります。水道管が破損すると地上に水が噴出します。また地震による津波で家が流され、住宅と水道管の接続部分が壊れることによっても断水が起こります。
停電による断水の原因は水道施設が必要とする電力が供給されなくなることです。水道の蛇口まで水を送るためには電力が必要です。そのため停電になると送水できなくなり断水します。最近では停電時も送水できるよう発電機を備えているところもあります。

おすすめの断水対策

①水道水の汲み置き
飲料用と調理用水を1人1日3リットルの3日分で9リットルほど清潔な蓋付きポリタンクで汲み置きしておきましょう。水道水には塩素が含まれており、消毒効果で汲み置いてから3日間ほどは飲料用に使用できます。煮沸すると塩素の効果が薄れてしまうので、汲み置きをする場合は煮沸せずにそのまま水を注ぎ直射日光と高温を避けて保管し定期的に入れ替えます。キャップギリギリまで入れて空気をなるべく入れないことがポイントです。

②長期保存用の水を備蓄する
災害に備えて5年から10年の長期間保存できる水もあります。

③非常用トイレ、水不要の生活グッズ
断水するとトイレの水は流せません。非常用トイレなら匂いを気にする必要がなく衛生的。さらに水が不要なドライシャンプーや衛生用品、備蓄食料も活用しましょう。

④公的な給水所を把握する
お住いの地域の給水所を確認し事前に把握しておくこともおすすめです。給水所から自宅までの距離や道のりを知ることで、実際の給水方法をシミュレーションすることができます。タンクだけではなく、台車があれば便利な場合もあります。私はリュックサックに45リットルゴミ袋を2枚重ねてその中に給水し、口を縛って自宅に持って帰ることを勧めています。多少の重さでも軽く感じる、両手が空いているので水を運ぶ際に大きなメリットとなります。

マイコンメーターって知っていますか?

ガスメーター(マイコンメーター)は、ガスの使用状況を常に監視し、危険と判断したときはガスを止めたり警告を表示する機能を持っています。ガスメーターはガス使用中に震度5相当以上の強い振動を感知した場合、安全のために自動的にガスを遮断します。マイコンメーターが付いている場合は大きな揺れがあった際にわざわざガスの元栓を止める必要はありません。むしろマイコンメーターの場所や再開する手順を知っておく必要があります。
ガス会社のホームページにイラストや動画で再開手順が掲載されていますのでぜひ一度ご覧になってください。

ガスがなくても調理はできる

停電時はIH調理器だけでなく、電池以外の電源を使うガスコンロや給湯器も使えなくなります。また、地震などの場合は、ガスの供給も止まってしまう可能性も高いでしょう。お湯を沸かしたり、非常食を温めたりするにも、カセットコンロとボンベを用意しておきましょう。水を入れるだけで、食品などをあたためられるヒートパックなども便利です。他にもキャンプギアを使うのもいいでしょう。私は100円均一ショップで売っている固形燃料やアルコールランプ、薪ストーブや七輪なども持っているので、いろいろな熱源を使ってお湯を沸かしたり、調理したりしています。

キャンプギアは日常使うべし

ライフラインを切った生活は、実はキャンプと同じではないでしょうか?
コロナ禍を経て、おうちキャンプも流行っています。週末のイベントとして、あえて家の中のライフラインを切って、不自由な生活をしてみることも、防災訓練の1つとなります。不自由をあえて楽しんでみる。その経験が災害時に生きてきます。何回もやってスキルを磨いてください。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2024/1/22掲載