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もしもの時に役立つ防災コラム

日常の味こそ災害時に食べたくなる

災害が変わったので、防災対策も変えることが必要!

今年はエルニーニョ現象の影響で、猛暑、豪雨、台風などの自然災害が多発しています。今までならば、災害は特定の範囲で起きていました。しかし今年は、熱中症でバタバタと人が倒れる地域がある一方でゲリラ豪雨や線状降水帯の発生頻度も高まり、水害で命を失ったり、床上浸水等で家では生活できなくなった人がたくさんいます。
最近の傾向として、自然災害は広範囲に及んできています。

そこで考えなければならないのが、避難時の食事です。今までは災害エリアも限定されていて、1つの災害に対してケアをしてきました。ただ残念ながら、今の状況では国も自治体の支援も追いつかない。その上、被災エリアが広ければ、救援物資などを配送し、手渡しすることも難しくなってきます。今までの支援を期待しても、どうにもならないかもしれません。そうなったらもう自分たちでなんとかするしかない。今後は缶詰やレトルトなどの防災専用の食事しか食べられなくなるかもしれません。

私は今まで全国の被災地に赴き、避難されている方々の生活をサポートしてきました。その中で被災された方々がおっしゃるのは、「普段食べたことがないものをいつまで食べればいいんだろうか」、「普通に食べていたご飯が食べたい。でも全然準備してないからそれは叶わない夢ですよね」と言う言葉です。これだけ日本で災害が増えてきているのに、避難先で食べるご飯が、非常時用のものだけで本当に良いのでしょうか?私はそれはかなりきつい状況だと感じています。生き延びて、そして復興していけるとは思えない。食べるものは精神的な支えになるからです。

今回は被災してからの食事についての具体的な対策や考え方をお伝えして、いざという時に実践していただきたいと思っています。

私が実際に見てきた避難先での食事

地震や水害にかかわらず、大抵の方は、避難所に行けば、自分の寝る場所と食べるものは十分提供されると思っていると感じます。なぜならば、避難所に自分の食べるご飯を持ってくる人は意外と少ないからです。温かく充実した食事が必ずもらえると思っている方も少なくはありません。たとえ持ってきていても、防災用とか非常食。1度も食べたこともないし、どんな味かもわからない。自分の好みに合うかもわからない。そんな食事を持ってきている方が多くいます。

人は災害が起きても同じものが続くと不満を感じます。冷静な状態でこのトピックスを聞くと、そんな贅沢なことを言うのはおかしいと思うかもしれません。しかし、実際にはやっと配給された救援物資でも同じものが配られると、大人も子どもも不平不満を言い出します。例えば、手間暇をかけて作ったおせち料理を元日の朝に食べた後、その日の昼夜に出されたら、違うものが食べたいと文句を言う、こういう状況に似ているのかもしれません。残念なことに救援物資は大体同じものがたくさん来ます。バリエーションに富んだ食事というものはかなり先でなければ手に入りません。その人の好みに合った味も手に入るとは限りません。日常の冷静な時でも、同じものが続けば不平不満が出ます。災害時で心が落ち着かない、常に不安にさらされて、ストレスを感じている状況の時はどうでしょう。自分の口に合うかどうかわからない、食べたことがないものが続けて出されると、やはりメンタルダウンしてしまいます。

いくら長期保存ができるからと言って、あなたの好みの味とは限らない。つまり元気の源になるとは限らないのです。前もって一度は食べて、本当にそれは自分が食べて元気になるものなのかを見極めていてほしいと思います。

災害が起きて、日常の食事は用意できるのか?

災害が起きてライフラインが切れてしまう。そんな時こそ、なぜか普段食べていたものを食べたくなります。例えば熱々の白いご飯、肉じゃが、焼き魚、豚肉の生姜焼き。熱々のパスタ、餃子。食べることが叶わないと思うからこそ、普段食べているものを食べたくなるのかもしれません。

いつもならば感じない。しかし日常の味を食べることは、心の平静を取り戻したり、元気になれたりするのです。日常の食事に近いもの、もしくはそれを作れる素材を備蓄しておけば、災害が起きても食べる事は可能なのではないでしょうか。なぜそのようなことが断言できるのか?それは私が大阪府北部地震で被災したときに実践したからです。そんなテクニックを具体的にお話ししたいと思います。

被災した日に、あなたは何を食べましたか?

大阪府北部地震は2018年6月18日に発生しました。私は震源から3キロほど離れた場所で被災しました。15階建てのマンションの12階、大きな揺れとともにライフラインは断絶しました。家の中は防災対策をしていたので、何も落ちることもなく、倒れたのは調味料が4本のみ。家の中外をチェックして私は在宅避難をすることを選択しました。
家の中の安全地帯が確保できているというのは非常に安心です。そこで寝ることも食べること、調理することも可能だからです。私は防災対策として缶詰やレトルトなども常備しています。それ以上に普段から、自分の好きなものは充実させています。そして1つの素材から別の料理を作るバリエーションも実践しています。調理ができる素材がある。そして熱源がある。これさえ揃えば普段と変わらない食事は十分に作ることが可能です。そして停電しても、冷蔵庫の中身を把握しているので、何をどの順番で食べればいいかも考えることが可能でした。私にとっては冷蔵庫の中身も十分な災害備蓄となります。常温保存の野菜はもちろんのこと、パスタソースやレトルトカレー、カップスープの素なども全て「いつも食べている日常の味をつくる調味料」として使いました。少ないものを工夫して、自分がおいしいと思えるものを食べる。それは生きる希望にもなりました。

地震当日の昼、私は食パンをカセットコンロ+フライパンで焼いて蜂蜜をかけて食べました。夜はメスティン(アルミでできた四角い飯盒)でおいしいご飯を炊き、ふるさと納税の返礼品で手に入れたイクラをご飯にのせて食べました。普段からよく食べる鯖の味噌煮缶と冷凍のほうれん草とミックスベジタブルで作った野菜炒めも食べました。そしてお湯を沸かしてフリーズドライの味噌汁も飲みました。どれも熱々、普段から食べているなじみの味なので、非常に心がほっとしました。

地震当日の夕飯

しかし私の友人たちはそんなご飯を食べていません。震源地の高槻市に住む友人宅(友人・夫・子ども1人)は、3日後、救援物資で配られた食事が非常に少量だったとのこと。何で味付けしたのかわからないものが入っていて、アレルギーがある子どもには食べさせられなかったと言っていました。家族3人でもらえたのは、ポリ袋に入ったご飯、ゆがいたアスパラガスが1本、ジャガイモを煮たもの(何で味付けしたのか、不明)、そして野菜スープ(これも何が入っていて、何で味付けしたのか不明)、デザートにお菓子が配られたけれど、包装されているものではなく、不安だったから食べなかったと言っていました。

それはボランティアの方々が心を込めて作った、炊き出しで配布されたもの。しかし材料と味付けに何を使っているのか、これはアレルギーがある人にとっては命に関わるものです。ありがたくても口をつけることができないこともあります。その上3人家族では、到底足らない量です。これが現実の被災したときの食事です。自分の好きなものを好きなタイミングで食べられるように。それも好みの温度で食べられるように、準備してください。
あなたが普段はそんなに意識していない家庭の味。それをどんな時でも作れるように準備をしておけば、元気がみなぎってくるのです。

普段意識していないからこそ、自分の好きなものを明確にする

あなたが普段の生活の中で何回続いても飽きない食べ物って何でしょうか。そしてそのレシピを把握していますか?それが災害時に食べたら元気が出るレシピになります。そんなに難しいものでなくても大丈夫。意外と駄菓子やお菓子などでもOK。災害にあったショックで食べ物が喉を通らないこともあります。でも普段食べ慣れているお菓子だったら、少量でも食べられるかもしれません。その上、お菓子は少量で高カロリー、甘さもあるので、心をほっとさせることも可能です。

ちなみに私が飽きない食べものは、納豆+卵かけご飯です。最近、納豆が冷凍できるのを知りました。普段の備蓄としても、災害に遭った時も、納豆がいつでも食べられる状況ができました。卵も冷凍できることを知ったので、最強です。自然解凍すれば何の調理もせずに食べられて、便利になりました。

その次に飽きないものは焼売です。蒸すはもちろん、焼いても、煮ても、揚げてもおいしい。スープの具としてもとても良い仕事をしてくれます。なので、冷凍庫には必ず焼売のストックが入っています。リモートワークなどで1日中、家で仕事をしている、しかし昼ごはんをゆっくり調理する時間がない。そういう時はこの焼売をうまく使っておいしい料理を作っています。…と何回食べても飽きない食べ物が私の中では明確であり、それがきちんとローリングストックできています。これには不安がありません。そしていざという時も、十分に私を喜ばせてくれる食べ物です。

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実際に、大阪府北部地震では、ライフラインの復旧に約1ヵ月要した地域もありました。そのため在宅避難で乗り切れなかった方がたくさんいらっしゃいます。同じマンションの中でも、備蓄が足りないとか、防災食ばかり食べていて、なんとなく体の調子が悪くなったから、実家に帰ると言う方もいらっしゃいました。食事に関しては、ストレスを感じていた方も多く、「いろいろ買い込んでいたけど、全て口に合わなかった、よかったら食べて」と分けてくださった方もいらっしゃいます。
私もライフライン断絶は、正直不便ではありました。しかしそれ以外に関しては特に不便を感じませんでした。いろんな方面で考えても、在宅避難で充分賄えると判断し、避難所には行きませんでした。その判断ができたポイントは以下のものです。

① 建物、家の中に関して全く問題がなかった
② 日常の味を作るための備蓄があった
③ 調理をすることにも何の問題もない
④ そこで生活することに、不便を感じない
⑤ 今までに日常でやってきたことの延長線なので問題ない

もちろん食べるものだけではなく、衛生面や睡眠、排泄なども特に不便を感じることもなく、家にあるもので組み合わせて何とか乗り切ることができました。振り返ってみても、食事が日常の味だった事は精神的な支えになりました。そしてこれは体験してみて改めて感じられたことでした。あなたもぜひ自分の安心する日常の味を探してみてください。普段はガスコンロやIH機器で調理されている方は、カセットコンロや固形燃料で、料理できるように何回かやってみてください。いざと言う時にも、日常の味を再現することが可能になります。まずは、明日の昼のご飯にあなたの好きなものを作ってみましょう。災害時の食事に対するアクションは、そんな小さなことから続いていくのです。

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2023/8/25掲載