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もしもの時に役立つ防災食コラム

大阪府北部地震(2018年6月)
発生時の在宅避難

こんにちは。国際災害レスキューナースの辻直美です。
私はこれまで国内外合わせて30ヵ所以上の被災地に入って活動をしてきました。私の経験をもとに日頃からの心がけ・備えなどみなさまにお伝えしていきたいと思います。

大阪府北部地震の実際

2018年6月18日7時58分、大阪府北部を震源としたM6の地震が発生しました。
私は震源から3キロしか離れていない場所に住んでいて、震度6弱の地震に遭いました。住まいはマンション15階建ての12階、かなり長い時間揺れてライフラインは壊滅。全ての復旧までには1ヶ月かかりました。

そんな中、在宅避難を選択し、被災地の高槻市にもレスキュー活動で現地入りをしていました。
そして在宅避難中は、家にあるものだけで生活をしました。こうやって聞くとさぞかし辛い生活をしていたのでは?と思われるのですが・・・実際は普段の生活とほとんど変わリませんでした。そして食事に関しては、普段と変わらない、むしろ普段よりも豊かな食生活をしていたように思います。ちなみに隣人の家の中はぐちゃぐちゃで、ご飯を作れるような状況ではなく、1ヶ月半避難をされていました。

揺れた瞬間に我が家は大丈夫と思えた

あの日、私は名古屋で講演会があったため、早めに起きて準備をしていました。朝ご飯は食べ終わり、食器は洗って片付けておきました。洗濯も終わってベランダに干して、のんびりと書斎でパソコンを見ていたんです。まず揺れる前に、一緒に暮らしている猫2匹が寝ていたのにいきなり起きてどこかに隠れてしまいました。それから30秒後に一気に突き上げる感覚と激しい横揺れ。上の階から家具が倒れる音が聞こえました。お隣からはガッシャーンという音のあと、「ぎゃー」という声が聞こえました。あちこちから聞こえるモノが倒れる音や人の叫び声。
しかし私の家は何も倒れません。かなり揺れていても倒れる気配がありません。そして何も落ちてこないのです。正直、シャンデリアやカーテンは激しく揺れているのに何も落ちてこない様子はとても不思議な感じでした。
結局震度6弱という被災をしたのに、我が家はペットボトルと調味料が4本倒れただけ。他は何も被害がありませんでした。

しかし、マンション自体は被災をしていました。その瞬間からライフラインは断絶。私の住むマンションはオール電化なので、すべてのことが何もできなくなってしまったのです。それだけではなくマンション自体もヒビが入り、となりの棟同士をつなぐエキスパンションジョイントも外れてしまって自分たちの動線もかなり限られてしまいました。

きっとこんな状況になれば、たいていの方はパニックに陥るに違いありません。しかし私は何も焦ることがありませんでした。なぜならば私は災害に対してモノを準備するだけではなくスキルを備えているからです。まずやった事は家の中のチェック。その次に外に出てドアが開くのか、窓は歪んでいないのか、廊下や壁の被災状況はどうなのかをチェック。それからベランダに出て外の状況を確認。必ずDMAT(災害派遣医療チーム)の出動要請がかかるはずなので、その準備をしていました。その準備をしつつも、今日はこちらに帰ってこれたなら何を食べようかなぁと考えていました。

被災地でのレスキュー支援の後、自宅に帰る日々

私の自宅から被災地までそんなに遠くはないため、夜は自宅に帰ることにしました。
マンションは真っ暗、エレベーターも動きません。大半の人は避難所に行ったようです。人の気配もほとんどありません。しかし私は避難所に行く選択肢は持っていませんでした。なぜならばすべて家の中で賄えると判断したからです。普段からランタンやソーラーライトなどのあかりを一部屋一灯で備えています。そしてカセットコンロや固形燃料なども常備しているので調理は全く問題ありません。水に関しては常に216リットル(大人1人が1ヵ月半暮らせる程度の水)を備蓄しています。
おしりふきやドライシャンプー等もあるので被災地に行って帰ってきても身体の清潔が保てました。

疲れて帰ってきてまずしたかったのは、やはりご飯。この日の私の食事は普段よりも豪勢なものを食べたと記憶しています。みなさんにとって被災時のご飯ってどんなイメージですか?レトルトや缶詰は冷たいまま食べるのではないでしょうか。私は被災した時ほどおいしいご飯を食べると決めています。この日に私がした事は…。まず冷蔵庫の電気が使えなくなりゆっくりと中のものが溶けているなぁと予測。中に何が入っているかを把握しているので、どの順番で食べようかと計画も立てました。
まずは常温の葉野菜など足の早いもの、次に冷蔵、そして最後に冷凍です。むやみに冷蔵庫を開けなければ外気が中に入らないため保冷状態が一定時間保たれると言われています。

体を使って疲れている、明日もレスキューに行かなくてはならない自分の状況も考えると・・・。タンパク質をしっかりとっておきたいなぁと思いました。
そこでメスティンで白米を炊き、冷蔵庫に入れていたイクラをかけてイクラご飯。鯖の味噌煮缶と朝の残りのミックスベジタブルにバターを入れてメスティンで温めて食べました。
あと固形燃料でお湯を沸かしてステンレスジャーに入れておき、インスタント味噌汁をつくりました。

6月とはいえ、 夜はかなり冷えました。こんな時に温かいもの、そして自分の好きなものが食べられたら、腹のそこから力が湧き出てきます。私の場合、家を片付ける事はありませんが(笑)
大抵の場合は自分の家を片付けることから始めなくてはなりません。そのためにもおいしいものを食べて元気になる。これは絶対に必要なことなんです。

被災時の備蓄はモノだけでいいのか?

災害に対して食事の備蓄をたくさんしている人はいます。それはすべて缶詰やレトルト、災害用に作られたものばかり。普段から食べたことのないもので、すべて単品で終わっているものばかり。その上温かくして食べる発想はほとんど見受けられません。それなのに、たくさんの数を用意しなくてはならないと思っています。そして、どれだけ用意すればいいのか不安になっている人もたくさんいます。

災害時でも、ものをどうやって使うのかという計画が大事です。大抵はそこにあるものをどうやって食べるのか?そのスケジュールは全く立てていないように思います。それでは、いくらものがあっても足りません。不安も尽きないでしょう。
うまく使い回す、使いこなすスキルこそが備蓄しなくてはならないものなのです。例えばインスタントラーメンがあります。これを作ろうとすると500 CCの水が必要になります。しかしインスタント麺を戻すのには100 CC程度の水でOKなのです。つまりラーメンとして食べるのではなく、焼きそばとして食べれば水も節水できるし、普段食べているご飯が食べられるのです。ラーメンのスープの素はお湯に溶かせばスープとして飲めます。これだけでお腹は温まりそして落ち着きます。

突然こういう調理をするにはカセットコンロや固形燃料、七輪などを使いこなすことが求められます。カセットコンロを用意している人はたくさんいますが、お鍋や焼肉の時しか使ったことがない、もしくは1回も使ったことがない方もいらっしゃいます。災害時は日常でやっていることしかできません。その上普段とは状況が違うので、どんなに肝が座っている人でも慌てます。やはりカセットコンロ1つも普段から使って火加減に慣れたり、調理のバリエーションを増やしていくことがポイントでしょう。

メスティンとカセットコンロでオイルフォンデュ

煮込み料理、焼き調理も普段の食事から

普段やっていたからいつも通りにできた

私にとってカセットコンロや固形燃料などで調理をする事は本当に当たり前のことです。またパッククッキングやスープジャー料理、低温保存調理なども忙しい中では時短料理としてやっています。だからいつもと変わらないことをやっているだけ。「いつもと変わらないことをやる」が災害時にはできないと皆さん思い込んでいませんか?もちろん同じクオリティーのことができなくても、同じようなものを食べる事は可能です。そんな中に冷凍食品の活用も考えてみてください。私の冷凍庫の中には餃子と焼売とパスタが必ず入っています。冷凍野菜や冷凍のお肉ももちろんあります。これだけでは料理はできませんが、キャンプのようにカセットコンロや固形燃料を使えば充分料理は可能になります。やればやるほど上手になるのが料理です。非日常でこれから先どうなるかわからない。不安の中では温かくておいしいもの、普段と変わらないものを食べれば絶対元気が出ます。
ものを買い揃えるだけではなくて、それを使いこなす、そんなスキルを今日から備えてみませんか?

執筆者:国際災害レスキューナース 辻 直美
※コラムの内容は、筆者の経験に基づく見解です。
2023/1/20掲載