田中の技術に対する想いには独特なものがある。学生時代から、店頭で誰もが日常的に手に取れる商品にかかわる仕事に就きたいと思っていた。自動車産業や精密機器などの産業より、もっと身近な一般消費材にかかわりたいという想いである。冷凍食品の分野は、まさに田中の希望にかなう業種だった。そして、工場での経験から、技術開発は工場で働く人や商品開発、さらには取引先まで、あらゆる人とのコミュニケーションを基本とした良好なチームワークが重要であるということを学んだ。生活者を満足させる冷凍食品は、技術者のひとりよがりではなく、みんなが力をあわせてはじめてつくられる、ということである。
ある日、田中は工場へ出向いて装置の不具合がないかをチェックしていた。製造機械の洗浄を工場スタッフたちと一緒に行ったため、帰宅するのは深夜になっていた。ふと夜空を見上げると、いくつもの星がきらめいていた。
―あの宇宙空間には、氷点下の熱が無尽蔵に存在する。それを生かして冷凍食品をつくれたら、どんなにいいだろう。
そこまで考えたとき、夜空の美しさより熱に想いを馳せている自分に苦笑した。
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