今回の研究・開発では、マーケティング部門と連携しながら味の素との共同体制がとられたため、丸山は群馬県の研究・開発センターを飛び出して東奔西走することもしばしばだった。社内のさまざまな部門のスタッフや、味の素の研究スタッフとの出会いは、食品づくりにはさまざまな専門分野がからんでいることをあらためて実感させるものだった。そして、この経験は自分自身が成長していくうえで確かな栄養成分になったと、丸山は実感している。
丸山が大切にしていることがある。料理には人間の五感すべてが使われる、という考え方である。味覚や視覚、嗅覚、聴覚、食感をひとつひとつ解きほぐし、また組み合わせることから、おいしいという感情や幸福感が芽生えてくる。研究者という立場でその現場に立ち会えることは、言い尽くせない充実感があった。
その一方で、丸山はかねてからもどかしさを抱いていた。冷凍食品はカラダに悪いと思っている人がまだまだ多いという現実だ。学生時代から健康をテーマに研究してきた自分から見ても、冷凍食品が健康によくないということはない。丸山は健康アプローチの冷凍食品をつくれる喜びを感じながら、健康にいい冷凍食品というカテゴリーを切り開いていけたらと強く思うようになった。
新婚ほやほやの丸山は、ある夜、夫とレストランで食事を楽しんでいた。テーブルに並ぶ料理を目の前に、このおいしさをつくっているのは何だろう、と無意識のうちに考えている自分に気づくと苦笑した。 |