ミリ単位での試作づくり、型起こし、製造ラインでの剥離しやすさなど、佐々木が製造過程で調整すべき項目は多岐におよんだ。加熱してふくらんだ状態でもキャラクターに似ていなくてはならないため、調整しては加熱調理し、加熱調理しては試食して調整するというステップをストップウォッチ片手に何度も繰り返した。試行錯誤の挙句、テレビ局との調整を経てライセンスを取得できたのは、秋の気配が色濃くなった10月末のことだった。感慨にふけりながら完成した“ドキンちゃん”のハート型の目をあらためて見たとき、彼女が自分に対して感謝しているような錯覚すらおぼえた。
2007年春、新しい“それいけ! アンパンマンポテト”が店頭に並ぶようになったある日の夕方、佐々木は家の近くにあるスーパーマーケットの冷凍食品コーナーにいた。
「ねえママ、ドキンちゃんがいるこれ買って」弾むような子どもの言葉に、笑顔でうなずき返す母親の姿があった。
キャラクター商品である以上、子どもを笑顔にするのは大切なことだ。そして何より、自分が手がけた新しいアプローチの商品が人に感動や喜びをあたえていることがうれしかった。
これからも自分のがむしゃらぶりをどんどん発揮していこう。味の素冷凍食品には、それを受け入れてくれる土壌がある。佐々木は自宅に戻ると、スーパーで買い求めたアンパンマンポテトをオーブントースターでカリッと焼いて口に放り込んだ。心の奥底に眠っていた懐かしさが押し寄せてきた。
|