市場ニーズの把握・分析、新商品や商品改廃のプランニング、レシピづくり、さらには生産・物流の最適化、営業部への説明まで一貫したコーディネイトを実施。さらに商品構成の変化は、工場の人や機械の配置、売上げなどにも影響をあたえるため、全体バランスを意識しなければならない側面も。他部署や顧客とのきめ細かなコミュニケーションが重要になります。
「ジャパニーズ・ライク・ソイソーステイスト…」2006年3月、タイの工場に出向いた内藤裕史は、新商品のグリルチキンを説明するために、自分でまとめたプレゼン資料を提示しながらスタッフに語りかけていた。学生時代からの旅好きだから英語にふれる機会はあった。ビジネス英会話となると話は別だが、自分の言葉で伝えることがなによりも大切だと考えていた。日本の食文化や日本人の嗜好、商品コンセプト、求められる味覚や食感などを工場の現地スタッフが理解しているといないとでは、品質だけでなくモチベーションにも大きく関わるからだ。

なぜこのサイズなのか。なぜしょうゆ味にするのか。なぜ焦げ目をつけすぎないほうがいいのか。熱意をもって誠実に説明すると、スタッフたちは理解を深めてくれた。目的意識が生まれたことで目の輝きが増し、モチベーションが高まっているのがわかった。内藤はあらためて人に伝えることの大切さを思い知った。

人に伝えることの大切さ。内藤がそれを痛感したのは、大学院でバイオテクノロジーの研究に携わっていたときだった。学会で研究者たちの説明を聞いているとき、拭いがたい違和感を抱いたのだ。
−なぜ自分の研究成果を興味深く伝えようとしないのだろう。
研究者たちは自分の研究に没頭するばかりで、その成果を他人に伝えようとする意欲が少なすぎるように見えたのだ。はじめはシミのように小さかった違和感は次第に大きくなり、内藤の進路にまで影響することとなった。
−研究もたしかに好きだけど、人に伝えることのほうが好きなんだ。

自分でつくり、伝えることのできる会社として内藤が選んだのが、味の素冷凍食品だ。入社後2年間の営業部での仕事を通じ、相手が求めていることを理解し、要求を満たす術をおぼえた。マーケティングの仕事に携わっているいま、トータルなコミュニケーションを大切にしている。その基本にあるのは、自らが好奇心をもって知ること。商品に関わるさまざまなことを調べる努力を惜しまない姿勢だ。たとえば今回、先輩社員の口添えで焼鳥屋に出向き、自らの手で鶏を解体した経験もその一例だった。

2005年の晩秋に立ち上がったグリルチキンの新商品開発は、内藤にとって大きな財産となった。レシピ開発担当へのプレゼン、社長をはじめ役員が顔をそろえる開発会議でのダメ出し、改善ポイントをクリアしてゴーサインが出たときの歓び、スタッフたちとの良好なコミュニケーション…。すべては、マーケティングのスペシャリストへの血肉となっている。研究者のような探究心と、貪欲なまでのコミュニケーション力。それが他部署や顧客とのつながりを深め、業務にポジティブなパワーをあたえているのだ。

ある土曜日の昼下がり、内藤は自宅の近くにあるレストランに足を運んだ。無意識にオーダーしたのは、自分が携わったグリルチキンがプレートに並ぶメニューだ。ナイフを入れ、ひときれを口に含む。やわらかな噛みごたえのあと、ジューシーな味わいが口に広がった。
−いまどき冷凍食品とそうでない食品を区別することになんの意味もないよな。
先日、ある評判のレストランで食べたチキンの味を思い浮かべながら心の裡でつぶやいた。そして、昨日もチキンを食べたことを思い出すと苦笑せずにはいられなかった。
内藤 裕史 hiroshi naitou
マーケティング本部業務用事業部商品開発グループ
2003年入社
大学院 工学研究科エコロジー工学専攻卒業
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