惣菜用ギョーザは軌道に乗り、新たに依頼を受けた特注品ギョーザの納入が佳境を迎えたときだった。突然、スーパー独自でのギョーザの生産を再開するとの連絡が舞い込んできたのだ。それは惣菜ギョーザからの撤退を意味していた。
苦渋の経験と強い思い入れがあったからこそ、惣菜用ギョーザの再度納入が決まったときには素直にうれしかったのだ。試作品の試食を繰り返した結果、前回とは違うギョーザの納入が決まり、素材の違う2タイプを販売することが決まった。
惣菜用ギョーザの納入経験を通じ、北村はほかの得意先でも生かせる多くのことを学んだ。足しげく通うことでバイヤーのみならず厨房や店頭スタッフとのコミュニケーションが深まり、現場の動きを皮膚感覚で知ることができたのだ。そして、会社や得意先を含めた業界全体が女性の意見を求めていることを確認できたことも将来への血肉となった。求められたときに自分の意見を言えるように、また自分の意見を新たな提案というかたちにできるように、つねに意識するようになった。
ある惣菜を提案したとき、飛ぶように売れたことがあった。現場を見つめ、時代の空気を肌で感じ、既成概念にとらわれず自分の感性にそって提案した商品だった。そのとき北村は、目のつけどころ次第で喜ばれる商品を提案することができることを実感した。
ある日、北村はスーパーでの買い物がてら惣菜コーナーに足を運んだ。目の前にはずらりと弁当が並び、それぞれのパックには何種類かの惣菜が肩を寄せ合っている。なぜと首をかしげたくなる組み合わせから、食べてみたいと思う組み合わせまでさまざまだ。それを見ながら、やっぱり目のつけどころなんだよな、とひとり心の裡でつぶやいた。
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