「プレーンなゼリーを改訂して他社にはない独創的なデザートをつくれないだろうか」
学校給食用デザートの開発の話が舞い込んできたとき、岩崎裕にはある思惑があった。プレーンなゼリーではありきたりすぎる。食べるのが子どもたちなら、なにかわくわくする仕掛けがつくれないだろうか。岩崎は、自分がバイブルとする分厚い大学ノートをパラパラとめくった。自分が食品の開発に携わるようになってからアイデアやレシピを書きとめつづけたノートは、すでに十数冊にもおよぶ。

岩崎は結局、子どもたちに人気のイチゴを素材として使うことに決めた。だが、イチゴがどんなにたくさん詰まっていても、それだけでは感動などありはしない。試行錯誤の末にたどりついたのが、イチゴの果肉が混ざったゼリーの層の下に練乳のソースを閉じ込めるアイデアだった。スプーンを入れると、赤いゼリーの部分に白い練乳が混ざり合う。これなら、目で楽しみながらイチゴの果肉の食感も楽しめる。

開発畑を歩みつづけた岩崎には、コンセプトへの強いこだわりがある。冷凍デザートにとって「食べておいしい、見ておいしい」のは、もはや当然のことだ。これからは、「聞いておいしい、感じておいしい」デザートをつくっていきたい。すなわち、食べる人に喜びや感動を与えたいという想いである。今回のデザート開発では、直径71ミリの紙容器にいかに感動を盛り込めるか、ということが最大のテーマだったのだ。

研究開発センターに所属し、デザートの開発に携わる岩崎だが、その基本にあるのはマーケティングへのアンテナである。それは、マーケティング本部からのデータにとどまらない。時代の空気をつかみ、ダイレクトには食に関わらないことでも、そこからヒントを得ようとする。新しい素材や情報があればその発信現場に出向くように心がけるのも、その一例である。新しい素材を生み出すメーカーを尋ね現場に足を運べば、サムシング・ニューに出会う可能性が高いからだ。

岩崎には、客先との関係でなによりも大切にしていることがある。それは、納期を聞くよりも、まずはいち早く提案するという姿勢である。提案するタイミングが早ければ、その後に試行錯誤する時間が増え、それだけいい商品を提案するチャンスが増えるからだった。マーケティング志向の開発者として岩崎がめざすもの。それは、「スピード&情熱No.1」である。

ある夜、岩崎は研究・開発センターで新しいデザートの試作に没頭していた。クリームを指先にからめて口へと運ぶと、思いどおりの味に仕上がったと小さくうなずいた。
岩崎 裕 yutaka iwasaki
研究・開発センター 開発グループ (現在も同部署にて活躍中)
 
農学部卒業
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